私の中のあなた』は、米国のベストセラー小説を『きみに読む物語』のニック・カサヴェテスが脚色・監督した作品です。

白血病という難病を題材にしていますが、単に「泣ける」ことを売りにした全米が泣いた映画に堕すことなく、キャメロンディアスを母親役に向かえ、終末医療のあり方に鋭い問題提起を投げかける佳作に仕上がっています。


「savior sibling」という言葉をご存知でしょうか?難病の兄姉を救うため、ドナーとなるべく意図的に生み出された弟妹のことです。

骨髄移植では白血球の型であるHLAが一致することが必要ですが、骨髄バンクなどを通して他人から移植を受けようとすれば、一致する確率は数万分の1から数百万分の1と言われています。

そこでHLAが一致する確率が高い患者の弟妹を新たに生んで、そこから骨髄などを移植しようという発想が生まれました。

着床前診断によってHLAは事前に調べられるから、体外受精で複数の受精卵を作れば、そこから目的に合致した受精卵だけを選別することは可能なのです。

こうして生まれた子供は、誕生したその瞬間から自分の兄や姉のために血液や骨髄や臓器を提供する役目を背負わされて生きていくのです。

『私の中のあなた』の主人公アナは、3つ違いの姉ケイト専用のドナー「savior sibling」として生まれた11歳の少女です。

彼女は生まれてから、血液や骨髄などを姉の治療のために提供してきました。

しかし、病気は再発して、現在ケイトは腎不全と透析による合併症で苦しんでいる状況にあり、アナは腎臓の提供を求められます。

しかしアナは「姉のことは大好きだし健康になって欲しいとも思っているが、そのために自分の身体をこれ以上切り刻んでほしくない!」と弁護士を立てて両親を訴えます。

しかし、この映画は法廷物ではなく、訴訟の勝ち負けやどちらの言い分に正当性があるかなどを問題提起しているものではありません。

「死」を目前にした姉を目の前に、「自分とは誰か?」「自分は何のために生きているのか?」と自問するアナ。

妹の健康を犠牲にしなければ、病気と戦えない、そうまでして戦ってもなお、病気に打ち勝てないのではないかと苦しむケイト、死生観終末医療のあり方といったものをテーマに扱った作品です。

どんな手を使っても長女を死なせまいとする母親サラにキャメロン・ディアスと、対照的に残り少ない日々をできるだけ楽しく過ごさせようとする父親ブライアンにジェイソン・パトリック

最後の法廷シーンでは、アナの弁護を引き受ける弁護士にアレック・ボールドウィン、ケイトの死期を悟りつつ真摯に治療に当たる医師にデヴィッド・ソーントン、若くして死んだ娘を持つ判事にジョーン・キューザックが抑え目ながら存在感のある演技で引き締めています。

「最も稼いだハリウッド女優トップ10」では5000万ドル(約54.7億円)で1位となった、キャメロン・ディアスですが。初の母親役に挑んだ近作では、抜け毛を気にして引きこもったケイトを叱咤するシーンで、自らの髪をバリカンで剃るなど体当たりの演技で新境地を開いています。


そして明かされる家族の愛・絆
死は恥ずべきことじゃない、病に倒れることは「負ける」ことではない事を教えてくれる良作です。
日本ではとりわけ生体肝移植など、身内のドナーからの移植が圧倒的に多いのですが、肉親の健康を犠牲にしなければ、病気と戦えないのだとしたら? そうまでして戦ってもなお、病気に打ち勝てないのだとしたら?いろいろと考えさせられる一本です。