膵管内乳頭粘液性腫瘍(Intraductal papillary mucinous of the pancreas:IPMN)

IPMN/MCN国際診療ガイドライン 日本語版・解説から

すい臓腫瘍にはかたい「かたまり」をつくる膵がん、ブドウの実のような「ふくろ」をつくる膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)などがあります。

急性膵炎や慢性膵炎のためにできる嚢胞は炎症や膵管閉塞のためですが、それ以外のものの多くは膵管の粘膜に粘液をつくる腫瘍細胞が発生したことによります。これを膵管内乳頭粘液性腫瘍intraductal papillary mucinous neoplasm(IPMN)といいます。

IPMNは、現在では大きく主膵管型、分枝型、混合型の3つの型に分類されるようになっています。

主膵管型は、組織学的には腺がんにあたり、粘液産生量が多かったために膵管の出口である十二指腸乳頭が開大して鯉の口のような特徴があります。

主膵管型は約80%以上が悪性なので手術適応となります。

分枝型は、主膵管型が内視鏡で発見される例が増加し、超音波やCTなどの画像診断法の発達普及とあいまって、腫瘍が産生する粘液量が少ないときはこの特徴を呈さない症例があることがわかり、その後、主膵管の拡張のないIPMNの分枝型の存在も知られてきました。

分岐膵管内に存在する3cm以内の分岐型腫瘍で、腫瘍内に充実生成分がなく主膵管も拡張していないものでは殆どが、良性の線種で経過観察することが一般的です。

混合型は主膵管型と分枝型の混合したもです。

主膵管型と分枝型で比較すると、主膵管型に悪性のものが多く約80%は悪性です。一方、分枝型の悪性の頻度は約20%です。

男女比は2:1と男性に多く、男女ともに高齢者に多く認められ、好発部位は膵頭部です。


症状としては腹痛が52%と最も多いが、無症状で偶然に発見される例も9%にみられ、閉塞性黄疸は通常型膵癌と異なり18%と少ない。 その他、疲労感、体重減少、発熱などがみられる。臨床経過中に急性膵炎を発症する頻度が高いことや、糖尿病の合併が55%程度にみられますIPMN全体の手術例の5年生存率は78%で通常型膵癌に比較して良好な予後が得られます。

しかし多臓器浸潤や穿破したものの予後は悪くなっています。 IPMNは良性の過形成・腺腫から悪性の腺がんまで組織学的にさまざまのものがあり、良性から悪性へと次第に変化して行くことがわかっています。 2008年1月までに国立がんセンター東病院で切除を受けた患者100人の内訳は、良性の腺種37例 悪性の腺癌63例。 悪性の腺癌63例の予後は、予後不良の浸潤癌36例で。 つまり、良性1/3、悪性(予後良好)1/3、悪性(予後不良)1/3となっています。 IPMN由来の悪性浸潤癌の5年生存率は32%となっています。 悪性化しても膵管内に留まる間は良いのですが、一旦膵管の外、つまり膵の実質へと浸潤し始めると通常型の膵がんと同様に強い浸潤傾向と転移能を持つようになることも明らかになってきました。にも拘わらず膵がんなのに予後が良かったのは、この腫瘍が産生する粘液によって膵管分枝や主膵管の拡張をきたすために発見され易かったためと思われます。

発がんの頻度もわかって来ていて、主膵管型では平均70%、分枝型では平均25%と、主膵管型にずっと多く、内部に充実性の大きい隆起を持つものはがんが多いことも判明しました。 IPMNのもう1つのポイントは、それ自体ががん化するという特徴ばかりでなく、IPMNを有する患者は胃・大腸などの他の臓器にがんをつくり易いこと、さらに膵臓のIPMN以外の部位にも膵がんをつくり易いということです。 手術を要しないIPMN例でも、またIPMN切除後の症例であっても、1-2年毎に全身臓器の検診が必要と言うことができると思います。

昨年行われた、第15回欧州消化器病学会週間で膵管内乳頭粘液性腫瘍の患者に対し、術前の超音波内視鏡検査(EUS)によって悪性度を予測し、それを手術で得られた組織標本と比較したところ、良好な結果が得られたと、フランスのBeaujon病院のDermot O’Toole氏からの発表がありました。 膵管内乳頭粘液性腫瘍で手術を受けた患者103人(男性51人、女性52人、平均年齢61歳)。EUSによって手術前に腫瘍のタイプおよび悪性度を評価し、得られた組織標本と結果を比較した。膵管内乳頭粘液性腫瘍は、腫瘍が主膵管や枝分かれした膵管に存在したり、またはその両方に広がっているなど、多彩な病態を呈するのが特徴。 組織標本では、腫瘍は主膵管のみが3人、枝分かれした膵管のみが33人、混在型が67人だった。EUSによる術前評価の精度をみると、主膵管が含まれていると予測できたのは91%、枝分かれした膵管が含まれていると予測できたのが93%だった。 また、組織標本では、悪性腫瘍は47人で、このうち進行癌は23人でEUSの進行癌を予測する精度は70%だった。O’Toole氏は、「解析の結果、主膵管の直径や厚みなど、癌の進行度とかかわりが深い要素が幾つかあった。手術前に膵管内の癌の広がりを確認し、悪性度を予測するにはEUSが優れていることが確認できた」と話した。 九州大臨床・腫瘍外科、田中教授によれば「IPMNは、いろんながん、特に健康診断では見つかりにくい膵がんの発生を予告する旗印になり得る」。これを目印に、腹部超音波などで検診すれば、早期膵がん発見が期待できる。「ブドウの実」が膵がん治療の鍵を握っているかもしれません。



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